第70回 読書会「本と旅人」開催報告

2025年11月3日(月)に神田のカフェ「COLAZIONE VARIO」で第70回目の読書会を開催しました。

今回は26名の参加でした(うち、初参加は6名でした)。

今回も多くの方にご参加いただき、ありがとうございました!

本日紹介された本

小説、エッセイ、実用書など、いろいろなジャンルの本が紹介されました。

以下、運営のテーブルで紹介された本の一部をご紹介します。

ユージニア│恩田 陸

昔起こった大量毒殺事件を巡るミステリーで、色んな人からの話を聞いていくという形の物語。本作では、恩田さん特有のじっとりした湿度の高い空気感が楽しめるようです。

紹介してくれた方は、学生時代に普通のハードカバーで読んだそうですが、最近、完全版が出版されたとのことで買って再読したとのこと。完全版は、普通のハードカバーや文庫版よりもカバーや紙のこだわりが素敵な一冊で、作中に出てくる謎の紙片が実際に挟まっているなどの工夫が凝らされていました。素材以外の面では、「てにをは」以外の文字が一度だけ傾いているという文章は、不穏な空気感を醸し出すのに一役買っていると感じたそう。

今回の再読では、学生の頃に気付くことができなかった部分への新しい発見があり面白かったそうです!

血が、汗が、涙がデザインできるか│石岡 瑛子

紹介してくれた方は、「落下の王国」という映画を観たくて読んだそうです。石岡さんは、「落下の王国」などの監督の映画衣装のデザインをよくやっていて、この本は数年前に行われた回顧展の図録です。

石岡さんの作品には赤を基調とした作品が数多くあり、この図録でも赤の印象がとても強かったです。彼女の作品としては、資生堂のグラフィックデザイン、万博や映画での衣装デザインなどがあります。その衣装はどれも個性的、独創的で、舞台芸術っぽさもある気がするという話にもなりました。

デザインの世界では、本人が模倣しているつもりはなくても、インプットの時点で誰かしらの影響を受けてしまいがちな分野であるはずなのに、石岡さんは完全オリジナルを公言していたそうで、そういった強さにも惹かれると仰っていました。また、昔の方なのに第一線で仕事をしているところもかっこよくて魅力的だとお話していました。

リミナルスペース 新しい恐怖の美学│ALT236

リミナルスペースについての本。リミナルスペースとは、本来人がいるべきだろうスペースに人がいない不在の状況などを表す空間の呼び方だそう。

リミナルスペースを眺めると、「怖い」と同じくらい「懐かしい」という感覚が襲ってくると仰っていました。リミナルスペースの「リミナル」という単語自体には「移動」「廊下」という意味があるそうです。

また、紹介してくれた方は、とてつもなく大きいものに対して惹かれる、とも仰っていました。なぜ怖いと思うのか、なぜ魅力を感じるのか、理由を考えることも面白いそうです。余談ですが、この日は2名の方がこの本を紹介していて驚きました・・・!

ファイトクラブ│チャック・パラニューク

映画が有名な作品の原作小説。紹介してくれた方は映画だけ観たことがあり、最近の自分が主人公と重なる部分があるかもしれないと感じて読んだとのことでした。

本作は、生きる意味を見失っている主人公が殴り合うクラブに入ることから始まるお話。紹介者の方自身も、自分の人生をリセットしてやる!という感情になっていた時期だったので共感できるかと思い読んだところ、主人公がクレイジーすぎてあまり共感はできなかったそう。

ただ、映画よりもロマンス要素が詳しく書かれていたことが面白かったそうです。作者や作者の周りでの実体験も元にしているそうで、作者もまともそうに見えてかなりクレイジーな方なのではないかと思ったそう。

これだけされて本当に生きているのか、妄想なのではないかと思うくらいの痛い暴力が描かれているので読む時は注意が必要とのこと。そんなクレイジーすぎる主人公なのに、読んでいてどんどんかっこ良く見えてしまうことがすごいと仰っていました。

本日のハイライト

運営メンバーのテーブルで、フリートーク中や本の紹介の流れで話題になったトピックなどを一部紹介します。

リミナルスペースについて

リミナルスペースの本が取り上げられていたことがあり、リミナルスペースとはどういうところか、近場で行けるところだとどこがあるか、という話になりました。

一番挙げられたのが、休日のオフィス街。自然や廃墟は、それ自体も勿論魅力的ではあるけれど、人間が元々いなさそうな雰囲気を醸し出しているので、リミナルスペースとは少し違うかもね、という意見も出ました。

渋谷や新宿歌舞伎町など、人が大勢いそうな場所で、人がいないスペースを見つけたらつい写真を撮ってしまう方もいました。

映画の話

映画の原作小説を持ってきた方がいたので、小説と映画の違いの話になりました。小説を先に読んでしまうと、どうしても原作小説と映画を比較してしまうという意見や、映画好きと本好きの両立は難しいのではないか、という意見も興味深かったです。

私個人的には、やっぱり小説から読むと自分の頭の中でイメージが先行してしまうので、映画も気になっている作品は、なるべく映像化されたものから観るようにしています。あと、新書系の本が読書会の中でそんなに普及してないよね、、、という話にもなりました。

参加された方の感想

参加後の感想を一部掲載します。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました!

2回目の参加ですが、来るといい刺激が得られて嬉しいです。

25歳女性

普段知ることのなかった本を知ることが出来とても満足です。皆さんの言語能力の高さを実感しつつ、普段本や哲学的な話をする機会がないので良い機会でした。今回紹介して頂いた本も読みつつ、また参加したいです。

24歳男性

皆さんが紹介する本が多種多様で面白かったです!美術系から歴史の本まであって新たな発見になりました!

33歳男性

読書会後のランチ

いつもどおり読書会後は、そのままCOLAZIONE VARIOでランチを。

21名の方に参加していただきました。

今回はなんと珍しく、カレーライスでした!!肝心のカレーのルーの写真は撮りそびれてしまい、お米だけですが(笑)

いつも美味しい料理ありがとうございます!