第30回 読書会「本と旅人」開催報告

2024年9月1日(日)に飯田橋のレンタルスペースで30回目の読書会を開催しました。

今回は39名の参加でした(うち、初参加は8名でした)。

今回も多くの方にご参加いただき、ありがとうございました!

本日紹介された本

小説、実用書、エッセイ、詩集など、いろいろなジャンルの本が紹介されました。

以下、運営のテーブルで紹介された本の一部をご紹介します。

闇祓 | 辻村 深月

身近にある、様々な人間関係の中で生まれる悪意が描かれた、このサークルでも大人気の作家、辻村深月さんによるホラーミステリ小説。

5章に分かれており、高校生の恋愛、団地のママ友つながり、部下と上司、小学校のクラスにおける関係がそれぞれ描かれます。

最終章では、それまでの物語にちりばめられた伏線が回収され、読み応えがあったそうです。

紹介者は、部下と上司の物語が一番面白く感じたそうで、職場で起こるリアルな雰囲気が容易に想像できて、とても居心地が悪くなったみたいです。

紹介を聞いて、価値観の押しつけにより生まれる「闇ハラスメント」を物語を通して体験することは、多様な考えが存在する世の中で生きるためのワクチンになるのではないかと思いました。

たゆたえども沈まず | 原田 マハ

19世紀後半のパリの美術界で、日本の画商とゴッホの弟、そしてゴッホとの出会いから、伝説の一枚が生まれた背景が描かれた物語。

小説仕立てで美術家の一生が描かれており、作家の感性が言葉の節々から感じられる面白さがあるようです。

絵画に関する本だったこともあり、美術館での絵の見方について、
「絵画の解説文を読むのも好きだけど、原田マハさんの情感が込められた文章を通して絵の細部を追うのも、また違う楽しみがある」
という話があがりました。

宮沢賢治・漫画館 (1) | あすな ひろし、水木 しげる 他

宮沢賢治の著作を、様々な漫画家がそれぞれに解釈して描いた漫画集です。

全5巻あるようで、水木しげるや手塚治虫、松本零士も参加しているようです。

紹介者は特に「セロ弾きのゴーシュ」の漫画が気に入ったようで、主人公がある気づきを得るシーンで、現代の漫画ではあまり見られない独特の表現にいたく感動したそうです。

現代の漫画家が宮沢賢治の著作を漫画化するとしたら、誰にしてもらいたいかという話で盛り上がりました。 (「進撃の巨人」の諫山創さんにかいてもらいたいです。。)

上野アンダーグラウンド | 本橋信宏

さまざまな文化が密集した上野が持つ魅力が、作者の潜入取材を通した経験によって描かれるルポルタージュ。

アメ横やキムチ横町、不忍池、九龍城ビルなどの文化についてかかれており、上野のカオスな文化を知ることができ、図らずも深い闇に一歩足を踏み入れてしまったそうです。

少し駅から歩けば180°景色が変わってしまうような雑多性を持つ東京で暮らしていくうちに、街の魅力がわかるようなルポルタージュに興味を持ってしまいました。

熟達論:人はいつまでも学び、成長できる | 為末 大

コーチを付けずに独学で日本初のハードル競技のメダリストになった著者が、技術を熟達させるための方法論をまとめた一冊。

著者は「走る哲学者」と呼ばれており、本書の中でも哲学的な考え方がちりばめられているそうです。

走るときのゾーンに入る感覚について、著者は「座禅を組むときの感覚に近い」と述べているそうで、紹介者はこの言葉が印象に残っているとのこと。

紹介者は学生時代に陸上に熱心に取り組んでいたこともあり、そのような体験を持つ人ならではの紹介はおもしろかったです。

白亜紀往事│劉 慈欣

もし恐竜が高度な知能を持っていたら…という白亜紀のif設定の物語。

高度な知能を持ちながらも細かい作業は苦手な恐竜は、蟻と協力しながら文明を築き上げていくものの、宗教戦争的なものに発展し、結果的に恐竜と蟻が衝突してしまうようです。

SF的な内容ながら、登場する技術は現代的なもので突拍子もないものは少ないため、情景をイメージしやすかったとのこと。

単行本で200ページ程度の比較的少なめな分量のため、三体に手を出せないけど、劉慈欣の作品は気になるという方におすすめみたいです。

ある男│平野 啓一郎

亡くなった夫の名前や出自が、教えられていたものとは別物と知った女性が、ある弁護士に身辺調査を依頼し、夫の真相に迫っていくというストーリーの小説です。

ミステリー要素がありながらも、愛とはなんなのかについて言及していくようです。

紹介者は、ミステリーという物語の形式の中に、自身の思想を落とし込めるのがすごいと感じたみたいです。

また、平野啓一郎さんの作品を古い順から読んでいくと、彼自身の考え方がどんどんアップデートされているのを感じられるそうです。

作家の思想の遷移を楽しむことができるのは、やっぱりファンが持つ最大の特権ですよね。

盤上の夜│宮内 悠介

将棋やチェス、囲碁、麻雀など、ボードゲームを題材にした短編が収録されているSF短編集。

AIと戦うプロプレーヤーの葛藤や、麻雀におけるイカサマの手段など、ボードゲームを通して起こる出来事をSFの要素を混ぜ込んで描かれている話が多いとのことです。

紹介者は、将棋のもととなったと言われるインドのボードゲーム「チャドランダ」を題材にした話が一番気に入ったそうです。

中でも、この話に登場するブッタの息子ラーフラとブッタのやり取りが見どころらしく、お互い異なる考えを尊重しながらも語らい合う姿に感動したようです。

本日のハイライト

運営メンバーのテーブルで、フリートーク中や本の紹介の流れで話題になったトピックを一部紹介します。

本の装丁による演出について

本のカバーやカバー裏に特別な演出が施されていると、紙の本で買う嬉しさを感じられる、という話があがりました。

表紙とカバー裏で絵が違うというのはマンガでは割とあるが、小説ではあまり見ないことにも気付きました。

持っている本もカバーを取ると特別な演出が隠れている本があるかもという話になり、もっと本自体を楽しんでみようという気持ちになりました。

本を楽しめるバー

都内にある色々なBookバーの話になりました。

特に印象に残っているのは、上野にある『Bar Bookshelff』というところで、マスターに本の話をすると、おすすめの本を教えてくれるようです。

他にも、

ブックバーひらづみ

文藝サロン epokhe

というお店を知ることができました。

本を読みながらお酒を飲む、これ以上に至福な時間はあるでしょうか。

絵画を見るときの頭の中は

絵画を見るとき、頭の中で絵を動かしたりして、自分のなかでストーリーを構築する、という話があがりました。

私は、絵は一瞬の場面を切り取ったもの(微分した状態)と認識して楽しむことが多いです。

そのため、時間の経過(積分した状態)すら想像してしまう楽しみ方があることを知り、新しい発見がありました。

参加された方の感想

参加後の感想を一部掲載します。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました!

色々な本に出会えてモチベーションになった。自分の感想をアウトプットすることで読んだ本に対する解像度も高まりました!

19歳男性

色々なジャンルの本を紹介していただいて、どの本も面白そうでした。

25歳女性

とてもおもしろそうな本に出会えました!絶対読みます!

女性

読書会後のランチ

読書会後は、Asian Dining &Bar SAPANA飯田橋プラーノ店でランチしました。

37名の方がランチに参加しました。

バターチキンカレーをいただきました!マイルドな風味のルーに包まれながらも、
鶏肉の確かな力強さを感じ、舌が踊りました!

やはりカレーと読書は相性がすこぶる良いです!