第53回 読書会「本と旅人」開催報告

2025年5月25日(日)に神田の「COLAZIONE VARIO」で53回目の読書会を開催しました。
今回は28名の参加でした(うち、初参加は6名でした)。
今回も多くの方にご参加いただき、ありがとうございました!
もくじ
本日紹介された本
今回は「嫌いな登場人物が出てくる小説」がテーマでした!
皆さんいろいろな角度から登場人物の深堀をしていて興味深かったです!

以下、運営のテーブルで紹介された本の一部をご紹介します。
後ハッピーマニア│安野モヨコ
15年間の結婚生活をしていた女性の主人公が、突然夫から「好きな人ができた」と別れを切り出されるというストーリーの漫画。
出てくる登場人物がほとんど浮気や不倫などをしており、みんな嫌いになってしまうとのことです。
ただ、キャラが立っていて物語がどんどんおもしろくなっていくため、のめりこんでしまったそうです。
作家さん、嫌な目線を持っているな、、と痛感したみたいです。
ちなみに、ヱヴァンゲリヲンでおなじみ、庵野秀明の奥さんです!
YABUNONAKA│金原ひとみ
とある女性の性加害の告発をきっかけに、加害者・被害者・周囲の人間などの模様が描かれた、金原ひとみさんの新刊です。
全14章がそれぞれ人物名で構成されていて、同じ出来事が違う視点から語られるようです。
事件にかかわる人間がたいていクズのような人間ばかりのようですが、その男が報復を受け罵倒される文章に、読んでいて爽快感を覚えたそうです。
紹介者は、金原ひとみさんの本は女性に人気があるようですが、同じ本でも男性が読んだら感じ方がまた違うのかな、と気になっていました。
ちなみに、ちょうど少し前に、金原ひとみさんの『蛇にピアス』で課題本読書会をやりました。
そこでも、性差にかかわらずいろいろな意見、考察が出てきたので興味深い回でした。
ピクニック│今村夏子
今村夏子さんの「こちらあみ子」の文庫版に収録されている短編です。
私が紹介しました(笑)
中年女性の七瀬さんが新人バイトとして店に入り、ほかの従業員と関わっていく話です。
七瀬さんが、「自分はお笑い芸人と付き合っていて...」と近況報告というのろけをするのですが、どこか無理があって虚構っぽい。
その痛さもあるのですが、周りの従業員がその話に便乗して無理のある話を続けさせる。
途中、完全に空気が一変するシーンがあるのですが、そこの宙づり感が半端ないです。
表面には出ないけど腹の底でみんなうっすら笑っている陰湿な悪意に触れるやばい体験をしました。
もともとこの本は『花束みたいな恋をした』で、有村架純が演じる絹ちゃんが、
「今村夏子さんのピクニックを読んでも何も感じない人なんだよ」と揶揄しているのを見て読んでみたいと思ったのですが、これは心動くだろ。。というかひえひえになるだろ。。
ずっとお城で暮らしてる │シャーリィ・ジャクスン
田舎町の外れにある大きな屋敷に暮らす女の子が主人公の物語。
ある事件をきっかけに村の人から疎外を受けてしまうことになり、孤立していってしまうようです。
語り手が主人公の一人称の物語のようですが、彼女の偏執的な見方が露骨にあり、嫌さがあるとのことです。
村の人が醸し出す排他的な描写から、作者はきっといじめを受けた経験があるんだろうな、と思ってしまったようです。
ちなみに紹介者は、この上の『ピクニック』とどちらを紹介するか迷ってこちらにしたとのことです。
どちらもテイストが似ているようで、私が紹介した本をセレクトしようとした人の趣味は絶対信用できるなと思い、即ぽちりました。
読書会参加してる中で、こういう本の出会い方をしたのは初めてだったので、新鮮でした。
本日のハイライト
運営メンバーのテーブルで、フリートーク中や本の紹介の流れで話題になったトピックなどを一部紹介します。
嫌いになり方、嫌になり方
今回は「嫌いな登場人物」という焦点の当て方をしたわけですが、その登場人物を嫌いになったことで物語自体までも嫌いになってしまったという方がいて驚きました。
そもそも個人的に、あまり登場人物に感情移入できないためか、「めっちゃ嫌い」な人物に遭遇したことがないこともあって新鮮な体験でした。
・登場人物のふるまいや考えが見てて最悪、大嫌いだ
となる人もいれば、
・めっちゃ「嫌なやつ」だけど、そういう人もいて物語が非常に面白くなってる
という考えの人もいました。個人的にはこれが一番ノれる。
また、
・嫌なやつを緻密に描くことができる作家の高すぎる解像度に敬服してしまう
・逆に嫌なシーンを演出するために、悪役を装置のように描くのが一番苦手
という人もいて、めちゃくちゃわかる!となりました。
嫌いとかやだみを覚えるのって本当に千差万別だなと思いました。
映画でもやってみたい!
読書会なので、嫌いな登場人物がでてくる「本」を紹介したわけですが、これって映画でやるともっと出てきそうじゃない?という話が上がりました。
たしかに映画は本と比べて視覚的な嫌さがより前面にくるし、キャラクターとして語りやすそうだなと思いました。
嫌な声、嫌なしゃべり方とかもあるし。
そう思うと俳優ってまじですごいな。。作家が練りに練った言葉を身体で表現しているのやばすぎ。
いやそこに至るまでの製作、監督、撮影監督、録音、編集、メイク、スタイリング、、そして脚本。全部の仕事がやばすぎる。
あらゆる力が動員されて、「嫌なもの」が作られている過程に感動します。
というかそもそも「嫌なもの」によって不快な気持ちになるという心の動かされ方をしている時点でそれは感動だなと思いました。
その絶対値が大きければ大きいほど食らってしまう。。
参加された方の感想
参加後の感想を一部掲載します。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました!
嫌いをテーマに話す機会は少ないので、すごく面白いテーマだと思いました。
28歳女性
自分が読まない本で気になるものをいくつも見つけられた。
25歳女性
テーマがはっきりしていたので、共感できたり、違う意見を聞けたりと、おもしろかったです。
男性
読書会後のランチ
読書会後は、そのままCOLAZIONEVARIOでランチをしました。
21名の方に参加していただきました!
いつもありがとうございます!
写真を撮り忘れてしまいました。。すみません。
最近取り忘れが多くたるんでいるので気を引き締めなおします!